◇◆夜と朝のあいだ◆◇ |
『寝てたか?』 「ううん・・まだ起きてた」 でも、もう夜中だよ?明日朝煉あるのに。 久しぶりの電話に、怒ってみせながらも内心ほっと息をつく。 電話ごしの声は、以前隣で聞いていた時よりも幾分低い気がした。 『蘭』 「何?」 顔さえ見えないのに、この声がこんなにも優しく響くのは何故だろう。 他愛の無い話で時間が過ぎていく。 先を語ることはしなかった。互いに無意識に避けている。 言葉を交せるなら、それでいい。 『あのさ・・』 少し会話が途切れた後で、戸惑いがちに何かを新一が言いかけた。 が、蘭は構わず遮った。 「新一」 『え?』 構わない。 君が戻ってくるなら。 「待つのは怖くないし、辛くないよ。新一が帰ってくる気があるなら、大した事じゃないの」 強がりではなく、本当にそう思っていると、君には届くだろうか? 君は、余計な感情を背負わないでいい。 『・・蘭・・』 「でも」 「死んでも帰ってくるなんて、嫌だからね?」 蘭の言葉に、密かに息を詰めた。 ・・・今まで、何故約束などしてしまったのかと思ったことがない訳ではない。 先の見えない身で蘭を束縛しているのは分かっていたから。 頭では、手放さなければならないと分かっているのに。 蘭の声を聞く度に、あともう少しだけと思ってしまう自分がいる。 好きだと言えないまま終わらせたくない。終われない。 矛盾していると思いながら・・・・・それでも、彼女が望んでくれるのならと思ってしまうのはいけない事なのだろうか。 『・・誰が死ぬかよ』 結局、新一は少しだけ苦笑混じりに返した。 その言葉が、彼女にとってどんなに心強いかなど知らないままに。 |
題 文
26巻の台詞からとんでもない方向へ。
作中、語ってませんが蘭は気付いてる設定です。
ちなみに、快青ver.もあったり。