「おはよ」
「おはよう・・蘭ねーちゃん・・・・?!」

目が覚めたら布団の中で眠っていた。
隣には蘭の顔があって・・・・。

思考が止まる。

なっ、なっ、なっ・・・・・!!
なんでここで寝てんだよっ!


「コナン君眠っちゃったし、私も眠くなっちゃってそのまま寝ちゃった」

俺はこの時、迂闊にも寝てしまった自分に後悔した。
そうだった、蘭にとっては子供の俺と寝ることなど全然気にしてない。
そりゃあ、見た目は子供。何かするという訳ではないのだが、それでも。
でも、精神衛生上避けたい。

あぁもう、やめてくれ頼むから。

「コナン君一緒に寝るとあったかいし」

悪かったな。
どうせ体温高い子供だよ!

声なき抗議を繰り返していた俺に、蘭はずずっと顔を近づけたかと思うと、にっと微笑んだ。
その満面の笑みに、思わず身構える。

「ね、なんか夢見てた?」
「へ?」
「寝言言ってたよ」
度重なる蘭の爆弾発言に俺の思考も麻痺しかけた矢先、更なる一撃が下される。
「・・・なんて?」
「・・覚えてない?」
ふふっと、意味深に笑う蘭に得体の知れない焦りを感じて俺は引き攣った。
全然覚えてねーんだけど、何言ったんだ?
聞きたい気持ちで一杯だが、聞くのも怖い。

「・・・全然・・・・覚えてないよ」
「そう、じゃあいいの」
誤魔化したいような誤魔化したくないような曖昧な気持ちで返せば、
あっけないほど蘭はさらりと話題を取り下げた。
よくねーよ。
「ねぇ、何言ってたの?すごく気になるんだけど」
「・・別に大したことじゃないよ。・・・・ねぇ?まだ6時前だから、私もう少し寝ててもいい?」
どうせお父さんいないし、今日日曜だし。

言うや否や、俺の意思などお構いナシに蘭は布団を肩まで被ってしまった。
おい、俺の布団だぞ、ここ。

「蘭ねーちゃん、あ、あのね・・」
部屋に戻って寝て欲しいんだけど・・。

言いかけた言葉も空しく、数秒後には小さな寝息が聞こえ始める。
・・・昔から、寝つきはいいんだよな。そのくせ滅多なことじゃ起きやしない。
諦めて、起きようと思った俺は、布団から出ようと体を起こそうとした時、起き上がれないことに気付かされた。

左手に、蘭の指。


「・・・・・俺にここにいろっていうのかよ」

コナンは、がっくりとうな垂れ、恨めしさに深い溜息を吐いた。
ガキじゃねーんだから・・!
無駄だと知りつつ、ぼやきたくなるのは許して欲しい。

仕方ない状況にすっかり寝入ってしまった蘭とは反対に、冴えきった俺の頭の中は昨夜のことが気になりだした。

―何か言ったっけ?
思い出そうとしても、明け方覚醒と引き換えに手放してしまった夢の続きは、なかなか記憶から引き出せない。

束の間。

「・・・・・」
「・・え?」

思いがけない寝言に、目を瞠る。
ただただ蘭の寝顔に見入っていたら、すっかり真冬を思わせる早朝の冷気に蘭が小さく身じろいだ。

「・・コナンくん・・」

少し迷ってから、絡められた指をほんの少し握り返すと、
気のせいか蘭は頬を緩ませた。
無邪気な表情につられて、コナンの口元に笑みが零れる。


(ま・・いっか)
余計なコトは捨てて。

オメーが必要としてくれる限り、俺はずっと。
「――ここにいるよ」






Fin.













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