〜flower〜


「よv」
「こんな時間に何の用?」
夜も遅い時刻。ベランダに降り立った白い衣装を纏った快斗を見つけて、青子は目を細めた。
「そんなに怒るなよvちゃんと間に合っただろ?ほら、お土産」
快斗は白い衣装のまま部屋の中に入ると、青子の前まで行き、言いながら手を差し出した。
差し出された手に思わず青子も手を差し出した。快斗の手を受けるように。
快斗がパチンと指を鳴らすと同時に、小さな赤い薔薇が1輪。
「ハッピーバースディ、青子♪」
「わぁあ!ありがと!」
思わず青子は手を伸ばした。
つい今さっきまで斜めだった機嫌も忘れて、嬉しそうに薔薇を眺めている青子に少し安堵しつつも、快斗はバツが悪そうに言う。
「・・でも悪ぃ。今夜はそれだけなんだ。明日ちゃんと持ってくるから」
本当はちゃんと用意してあったのだが。
予定外の仕事のせいで、今日は会いにくるだけでギリギリだった。
(現場に持ってけば良かったんだけどな・・・)
我ながら失態だと、快斗が内心思っていると、青子の嬉しそうな声が返ってきた。
「今回は大目に見てあげるよ。・・薔薇もらっちゃし」
本当は会えないと思っていた快斗に会えたし、という台詞は心の中で呟いた。
「・・・薔薇がそんなに嬉しいのか?」
「うん。快斗がくれた薔薇だから」
もう幾度となく見せたマジックだと思うのに。
快斗は不思議だったが、青子にとっては違った。
見なれたマジックのはずなのに、見る度に青子は嬉しくなれる。
快斗だけが、使える魔法なのだから。
青子の言葉に、一瞬快斗がきょとんとした表情になる。
なんでそんな顔をしているのか、分からなくて青子は不思議そうに首を傾げた。
「どうしたの?」
「・・なんでもねーよ。じゃあ、俺帰るから」
珍しく感情が顔にでて、赤くなりそうな顔を青子に見られないようにシルクハットで隠して、快斗は背を向けた。そのまま飛んで帰ろうと、ベランダの手摺に手をかけた時、
「・・もう帰っちゃうの?」
振り返れると、恥かしそうに俯きながら青子が窓際に立っていた。
その言葉に一瞬驚いて振り返る。快斗は少し考えるような素振りを見せてから、すぐに優しい顔になって苦笑した。
「・・本当は朝まで一緒にいてやってもいいんだけど、多分警部もそろそろ帰ってくるし」
快斗の台詞に今度は青子が真っ赤になった。
「なっ・・・!朝までなんかいなくていいわよっ!バ快斗のえっち!」
「そりゃ残念。じゃあまた次の機会にな」
快斗はぷぅっと膨らませた青子の頬に一瞬唇を寄せると、今度こそ白い羽を広げた。




快斗と新一以外誕生日ははっきりしてないんですよね・・。
9月は青子誕生日月間。人様のサイトで思い出しました(汗)
慌ててキリ良く9/1upです。
ちなみに警部を早く返してあげたのは、キッドのしわざです(苦笑)